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役員運転手の守秘義務とは?違反事例と罰則、確実に守るポイントを徹底解説

役員運転手の守秘義務とは?違反事例と罰則、確実に守るポイントを徹底解説

役員運転手の守秘義務について「企業に関する重要な情報さえ口外しなければ問題ない」と思っている方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、役員運転手に求められる守秘義務はそれだけにとどまりません。

役員運転手の守秘義務の範囲は、役員がどこへ行くのか、誰と会うのかといった役員の訪問先や、プライベートの情報にまで及びます。

万が一、守秘義務違反をしてしまうと、懲戒解雇や損害賠償請求など、キャリアに深刻な影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

 

そこで本記事では、役員運転手の守秘義務について、範囲、違反事例、罰則を詳しくまとめました。

 

1. 役員運転手の守秘義務とは

 

役員運転手の守秘義務とは、業務を通して知り得た情報を第三者に漏らさない義務のことを指します。

 

役員運転手に守秘義務が求められるのは、役員の会話や行動を間近で見聞きし、企業の機密情報に触れる機会が多いためです。

情報が漏れれば企業の信頼が失われ、事業に深刻な影響を及ぼしかねません。

 

役員運転手の守秘義務は法律に明記されていませんが、就業規則や雇用契約書で定められれば法的拘束力がともないます。

 

さらに重要なのは、退職後も守秘義務は継続するという点です。

在職中だけでなく、退職後も業務中に知り得た情報を守り続ける必要があります。

 

2. 役員運転手の守秘義務の範囲

 

業務中に見聞きした情報すべてが守秘義務の対象です。

ささいな内容からでも、企業の動向を推測されるおそれがあります。

 

守秘義務の対象となる情報は、大きく「企業の情報」「役員個人の情報」「役員の車内での会話・行動」の3つに分類されます。

 

2-1. 企業の情報

 

企業経営に関わる重要な情報は、株価や企業間の競争に影響するため、漏えいすると企業にとって大きな損害につながりかねません。

具体的には次のような情報が該当します。

 

  • 事業計画や経営戦略
  • 合併や買収に関する情報
  • 人事異動や人事評価
  • 財務情報
  • 取引先情報 など

 

これらの情報は企業の将来を左右するため、厳重に管理しましょう。

 

2-2. 役員個人の情報

 

役員のプライバシーに関する情報も守秘義務の対象です。

個人情報の漏えいは、役員本人だけでなく家族などの関係者の安全を脅かす可能性があります。

以下のような情報は厳重に守らなければなりません。

 

  • 健康状態や通院事情
  • 家族構成
  • プライベートの予定
  • 交友関係
  • 個人的な会話の内容 など

 

役員のプライバシーを守ることは、役員運転手として信頼関係を構築するうえでも不可欠です。

 

2-3. 役員の車内での会話・行動

 

車内で見聞きする何気ない情報でも企業の動向を推測される可能性があるため、守秘義務の対象です。

具体的には次のような内容があります。

 

  • 役員同士の会話内容
  • 電話での商談内容
  • 訪問先・移動ルート
  • 役員が誰と会ったか など

 

重要な情報はもちろん、業務中に知り得た情報を「これくらいならよいだろう」と自己判断で第三者に漏らしてはいけません。

 

3. 【事例で学ぶ】守秘義務違反になる具体的な行為

 

守秘義務違反には、意図的な情報漏えいと、悪意はなくうっかり漏らしてしまうパターンがあります。

悪意がなくても「情報が漏えいした」時点で違反となるため、注意が必要です。

 

実際にどのような行為が違反になるのか、具体的な事例を見ていきましょう。

 

3-1. 意図的に情報を漏らす

 

悪意をもって情報を外部に提供する行為は、最も重大な守秘義務違反といえます。

具体的な行為の例は以下の通りです。

 

  • 知人に企業の内部情報を話す
  • 競合他社やマスコミへ情報を提供する
  • 金銭目的で情報を売却する など

 

これらの行為は懲戒解雇や損害賠償請求の対象となることがあります。

また、不正競争防止法により刑事罰が科されることもあります。

 

3-2. 知った情報をもとにインサイダー取引をする

 

業務で知ったM&Aや業績などの未公開情報を利用して株取引を行うのは「インサイダー取引」にあたり、重大な犯罪行為です。

インサイダー取引は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられます。

 

また、自分が直接取引しなくても、第三者に情報を伝えインサイダー取引をされた場合も違反に該当するため、情報の取り扱いには細心の注意が必要です。

 

3-3. 無自覚に第三者に話す

 

悪気なく話してしまうケースは、最も注意が必要なパターンです。

どこから話が広まるかわからないため、家族や同僚だから大丈夫と安易に判断しないようにしましょう。

 

以下のような何気ない行為も守秘義務違反です。

 

  • 家族に「今日は○○社に行った」と話す
  • 友人との雑談で役員の話をする
  • 待機中に同僚運転手と役員や企業の情報を交換する

 

信頼できる相手だとしても、業務で知り得た情報は絶対に口外しないという意識をもつことが重要です。

 

3-4. SNSやインターネットで発信する

 

SNSやインターネット上での情報発信にも注意しましょう。

インターネット上で発信された情報は完全に削除することは難しく、瞬く間に世界中に拡散する可能性があるためです。

勤務先を特定できる情報や、業務中の写真や動画などを投稿することも守秘義務違反です。

 

また、訪問先や移動先の位置情報の共有も違反に該当します。

スマートフォンで撮影した写真には、位置情報が記録されることがあるため注意が必要です。

 

適切な設定をしないまま訪問先の写真などを投稿してしまうと、位置情報が明らかになるかもしれません。

インターネット上で発信すると不特定多数の人に見られてしまう可能性があることを念頭に置き、業務に関する情報は一切発信しないようにしましょう。

 

4. 守秘義務違反をした場合の罰則

 

守秘義務違反により企業に金銭的損害を与えた場合は、法律や契約違反として重大な処分を受ける可能性があります。

労働契約上の処分では、懲戒解雇や退職金の減額・不支給は免れないでしょう。

 

さらに、損害賠償を請求される場合は、金額が高額になるケースが多々あります。

不正競争防止法違反やインサイダー取引に該当する場合は刑事罰の対象になったり、場合によっては個人情報保護法違反に該当したりする可能性もあります。

 

刑事罰で有罪判決となり前科がつくと、同じ業界での再就職が困難になる恐れもあるでしょう。

一度の過ちが人生を左右することがあるため、守秘義務の重要性を常に意識することが大切です。

 

5. 守秘義務を確実に守るための実践ポイント

 

守秘義務を確実に守るためには、日常業務からプライベートまで場面ごとの対策を実践することが重要です。

 

ここからは、場面ごとの実践ポイントをご紹介します。

なお、企業ごとに決められた方法が異なる場合もあるため、就業規則などのルールを必ず守ることが前提です。

 

5-1. 日常業務で気をつけること

 

日常業務では、「情報に触れない、記憶・記録しない」ということを徹底しましょう。

 

役員が扱う書類や画面は見ない、会話が聞こえても意識的に聞き流すことがポイントです。

見聞きしても、記憶しない意識をもつことが大切です。

 

必要な情報だけを業務に活かし、それ以外は意識的に忘れる習慣をつけましょう。

 

5-2. プライベートで注意すべきこと

 

業務時間外でも守秘義務は徹底する必要があります。

 

プライベートでの会話や同業者との情報交換から情報が漏れるケースも多いため、家族にも仕事の話はできないことをあらかじめ伝えておきましょう。

そして、SNSでは勤務先を特定できる情報を発信しないようにしましょう。

 

特にプロフィールや画像投稿には注意が必要です。

信頼できる相手でも、業務を通して知り得た情報は共有しないという強い意識をもつことが大切です。

 

5-3. トラブル発生時に心がけること

 

役員の送迎においてトラブルが発生した場合、自分を守るために適切な対応をとりましょう。

例えば、役員の書類や私物が車内に残っていた場合には、不用意に触れず速やかに報告します。

 

また、第三者から役員や業務について質問された場合、情報を聞き出そうとしているかもしれません。

少しでも違和感を覚えたら、自己判断せずに上司に報告することが重要です。

 

5-4. デジタル機器の使用で守るべきこと

 

スマートフォンやカーナビなどのデジタル機器の取り扱いにも注意しましょう。

デジタルデータはコピー・拡散が容易であるため、厳重な管理が求められます。

 

例えば、個人のスマートフォンには業務に関する連絡は必要最低限のみを残し、それ以外はこまめに削除しましょう。

また、私物の持ち込みは最小限にし、録音や撮影も疑われないように注意します。

 

さらに、退職時は業務に関するデータを完全に削除することが重要です。

「情報に触れない、残さない、話さない」を意識することで守秘義務を確実に守れるでしょう。

 

6. まとめ

 

役員運転手の守秘義務は、企業の信頼を守るために欠かせません。

業務中に知った情報は、退職後の口外も厳禁です。

 

悪意がなくても情報が漏れれば違反となり、懲戒処分や損害賠償請求などが課される可能性があります。

日常業務からプライベートまで、常に守秘義務を意識して行動しましょう。

「情報に触れない、残さない、話さない」を徹底し、就業規則やルールを確実に守ることで、安心して業務に取り組めます。