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ドライバーの残業時間はどれくらい?2024年改訂後の職場選び

2024年4月、働き方改革関連法によってドライバーの働き方が大きく変わりました。

「残業時間の上限は年960時間」と定められましたが、「自分の残業は適正?」「今の会社は法律を守っている?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、法改正の基本ルールから、トラック・バス・タクシーといった職種別の残業実態、正しい残業代の計算方法を解説します。

 

「働きやすい会社」を見つけるための転職ノウハウまで、ドライバーが知っておくべき情報もまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

 

1. ドライバーの残業時間は何時間まで?基本ルールを解説

 

ドライバーの残業時間には法的な上限が定められており、2024年4月の労働基準法改正により業界全体で厳格な管理が求められるようになりました。

この章では、2024年の改正ポイントと基本的なルールについて詳しく解説します。

 

1-1.2024年4月の法改正で「年960時間」の上限規制

 

2024年4月から施行された働き方改革関連法により、ドライバーの年間残業時間の上限は960時間に制限されました。

この法改正は、運送業界の深刻な長時間労働問題を解決するために導入されたものです。

 

厚生労働省の調査によると、2017年時点で運送業の平均残業時間は84.2時間と、全業界の中でも特に長時間となっています。

現在は月80時間が上限として法的に定められており、これまで慣例的に行われていた長時間労働は法的に禁止されています。

 

この規制は、ドライバーの健康を守り、労働環境を改善することが主な目的です。

 

1-2.すべてのドライバーが知っておくべき労働基準法

 

労働基準法では、ドライバーを含むすべての労働者に対して基本的な労働時間の原則を定めています。

原則として、1日8時間、週40時間が法定労働時間です。

 

ドライバーの場合、連続運転時間は4時間が上限とされ、30分以上の休憩が義務付けられました。

これを超える労働には、36協定の締結と割増賃金の支払いが必要となり、特にドライバーは拘束時間と労働時間の区別が重要で、休憩や待機などを含めた拘束時間の管理が求められます。

 

1-3.36協定でドライバー業界だけ特別扱いされる理由

 

ドライバー業界は、36協定において他業界とは異なる特別な取り扱いがなされています。

一般の業界では年間残業時間の上限が720時間であるのに対し、ドライバー業界は960時間と長い設定です。

 

特に運送業界の業務特性上、交通渋滞や荷待ち時間など、労働者や企業の努力だけでは解決できない要因があるためです。

 

具体的には、荷主の都合による荷待ち時間や、天候・交通状況による運行遅延など、外的要因による労働時間の延長が避けられない現実があります。

ドライバーとして働く際は、ワークライフバランスを重視した働き方を選択しましょう。

 

2. ドライバー職種の残業時間はどれくらい?

 

ドライバーと一口にいっても、職種によって勤務形態や残業時間は大きく異なります。

ドライバー業界で転職を検討する際は、各職種の特徴を理解することが重要です。

 

この章では5つのドライバー職種の「労働時間・残業時間」と「勤務体制・拘束時間」について解説します。

 

2-1.タクシー運転手

 

タクシー運転手の残業時間は、勤務形態によって大きく変わります。

勤務形態は隔日勤務・日勤・夜勤の3つに分類され、日勤および夜勤は8時間勤務が基本です。

 

対して隔日勤務は1回の勤務で15~16時間の勤務が多く、最大でも21時間以内の拘束となります。

残業時間に関するデータは見つかりませんでしたが、月45時間以内、年間360時間以内が上限です。

 

ただし、36協定を結んでいる場合は1日8時間を超える勤務でも残業にはならず、週40時間を超えた分が対象となります。

 

2-2.バス運転手

 

バス運転手の労働環境は2024年4月の「改善基準告示」改正により、改善が図られました。

まず、拘束時間は月281時間以内に制限されています。

 

路線バスの運転手については4時間、高速バスの運転手は、2時間以内の連続運転時間が定められました。

厚生労働省の統計によると、平均労働時間は残業を含み月197時間(路線バスの場合)で、全産業平均よりも20時間長いです。

 

2-3.トラック運転手

 

トラック運転手は、ドライバーの職種でも最も残業時間が長い職種です。

全産業と比較したときに2割程度年間労働時間が長く、特に大型ドライバーは中小型ドライバーに比べて労働時間が長い傾向にあります。

 

これは荷物の積み卸し作業にかかる時間が関係しており、1運行あたり3時間程度発生するようです。

拘束時間の内訳で見ると約25%を占めており、長時間労働の一端を担っているといえるでしょう。

 

ただし、物流を担う職種であるため、国民の生活や経済活動を支える重要な役割であることも事実です。

 

2-4.配送ドライバー

 

配送ドライバーの労働環境は2024年4月の法改正によって改善傾向にあります。

労働時間については、年960時間の時間外労働上限規制が施されました。

 

拘束時間も月284時間以内となり、1日の最大運転時間は9時間以内です。

基本は13時間/日の拘束時間で、延長しても16時間以内の上限を守らなければなりません。

 

近年はネット通販の拡大により長時間労働になりがちであり、労働環境の正常化を進めています。

 

2-5.役員運転手

 

役員運転手は、ドライバー職の中で最もワークライフバランスが優れた職種でしょう。

月の残業時間は20~40時間程度となっており、一般企業の平均残業時間に近い水準です。

 

また、役員の動きに合わせて業務が発生するため、土日祝日は休みになる傾向にあります。

待機時間も労働時間として扱われるため、極端に労働時間が長くなりすぎることも少ないでしょう。

 

ただし、接待ゴルフや緊急時の対応では柔軟性が求められる点は理解しておいてください。

 

3.残業規制を守らない会社にはどんな罰則がある?

 

2024年4月の法改正により、残業時間の上限を超えた企業には厳しい罰則が科されるようになりました。

労働者も経営者も、これらの罰則内容を正しく理解しておくことが重要です。

 

3-1.違反したときの罰則と処分内容

 

残業時間の上限規制に違反した企業には、労働基準法第119条により厳格な罰則が適用され、具体的には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される場合があります。

 

この罰則は企業の規模に関わらず適用され、中小企業でも例外はありません。

違反が悪質と判断された場合は、厚生労働省による企業名の公表や、事業停止命令が出されることもあります。

 

労災事故が発生した場合、長時間労働が原因と認定されれば、企業の責任がより重く問われます。

 

3-2.労働基準監督署の指導内容

 

労働基準監督署は、残業時間規制の遵守を徹底するため、積極的な指導を行っています。

監督指導の際は、タイムカード、運行日報、給与台帳などの労働時間記録の提出が必要です。

 

違反が発覚した場合は、是正勧告書が交付され、改善計画書の提出が求められるでしょう。

改善が見られない場合は、書類送検や刑事告発に発展する場合もあります。

 

労働者からの通報や匿名告発も受け付けているため、違反企業の発見率は年々高まっている傾向です。

 

4.ドライバーの残業代

 

ドライバーの残業代を計算する際、複雑なケースは多々あります。

ここでは具体的な計算方法について、詳細をまとめました。

 

4-1.残業代の計算方法

 

ドライバーの残業代計算は、まず時間単価を正確に算出することから始まります。

 

時間単価が決れば、法定の割増率を適用して残業代を計算できるでしょう。

 

4-1-1.時間単価の計算

 

時間単価を計算する際は、以下の式を用います。

 

【時間単価の計算式】

時間単価 = 基礎賃金 ÷ 月平均所定労働時間

 

なお、月平均所定労働時間は、以下の式を使って計算しましょう。

 

【月平均所定労働時間の計算式】

月平均所定労働時間 = (年間所定労働日数 × 1日の労働時間)÷ 12ヶ月

 

4-1-2.割増率の適用

 

労働基準法で定められた割増率は以下のとおりです。

  • 時間外労働:25%
  • 深夜労働(22時〜5時):25%
  • 休日労働:35%

上記の割合を以下の計算式に当てはめることで、残業代を計算できます。

 

【残業代計算式】

残業代 = 時間単価 × 残業時間 × 割増率

 

4-1-3.歩合給制の場合

 

歩合給の部分を計算する際は、以下の計算式を用いてください。

 

【歩合給部分の計算式】

  • 歩合給の時間単価 = 歩合給総額 ÷ 総労働時間
  • 歩合給の残業代 = 歩合給の時間単価 × 残業時間 × 0.25

 

なお、固定給部分は通常の計算方法を適用します。

 

ドライバーの労働時間には、実際の運転時間だけでなく荷待ち時間や待機時間なども含まれます。

これらの拘束時間を正確に把握し、適切な残業代計算を行うことが重要です。

 

もし給与明細の内容に疑問を感じた場合は、労働基準法に基づく適正な計算を会社に求める権利があることを覚えておきましょう。

 

4-2.残業代が支払われないときの対処法

 

残業代の未払いが発生した場合は、段階的に対処していくことが効果的です。

具体的には、以下3つの手順で進めていくとよいでしょう。

手順1:証拠収集と直接請求
  • 労働時間の証拠(運行日報、タイムカード、GPS記録など)を保存
  • 書面で会社に残業代を請求
手順2:第三者機関への相談
  • 労働基準監督署への申告(企業への指導が目的、個人の回収代行はなし)
  • 労働審判(平均3ヶ月、3回以内で解決)
  • 弁護士相談(確実な回収を目指す場合)
手順3:労働組合加入
  • 団体交渉では企業側に応諾義務がある
  • 個人交渉より有利に進められる可能性

なお未払い残業代の請求権は、時効が3年間であるため、早めの対応を心がけることが大切です。

 

4-3.残業の証拠として使えるもの

 

残業代を請求する場合には、労働時間を客観的に「残業の証拠」として証明する必要があります。

残業の証拠となる情報は以下のとおりです。

証明力が高い情報
  • タイムカード・ICカード打刻記録
  • デジタルタコグラフ(改ざん困難で証拠価値が極めて高い)
  • GPS追跡システムデータ
中程度の証明力のある情報
  • 運行日報・業務日誌
  • メール・電話記録
  • 手書き記録(デジタル記録との併用が効果的)

残業代請求の時効は3年間のため、証拠は最低3年間保存が必要です。

 

5.転職を成功させるための完全ガイド

 

ドライバー転職の成功には、労働環境の悪い運送会社を事前に見極めることが重要です。

2024年4月の法改正により残業時間年960時間の上限規制が適用されたものの、違反企業は依然として存在します。

 

この章では、優良企業を見極めるポイントをご紹介します。

 

5-1. 転職活動で確認しておきたい3つのポイント

 

ワークライフバランスを重視するドライバー転職では、職種別の労働条件を数値で比較検討しましょう。

ドライバー転職のワークライフバランスを実現するため、面接時に以下3つのポイントを必ず確認してください。

 

実際の残業時間と休日出勤頻度 求人票と実態の乖離を防ぐため、直近3ヶ月の具体的な残業時間データを質問
有給休暇の取得実績 年次有給休暇の平均取得日数と、取得しやすい時期を確認
勤務シフトの調整柔軟性 家族行事や子供の学校行事参加のため、シフト変更が可能かを事前に相談

 

これらの確認により、入社後のワークライフバランス実現可能性を正確に判断できるでしょう。

 

5-2.求人サイトだけでは見えない会社の実態の調べ方

 

転職成功には求人票を超えた多角的な企業調査が不可欠です。

求職者の76.7%が転職口コミサイトを活用しており、企業の実態把握に重要な役割を果たしています。

 

具体的な調査方法としては、口コミサイトで現職・元職社員のリアルな評価を確認します。

面接時には実際に働くドライバーとの面談機会を依頼することも効果的で、多角的な情報収集により、求人票では見えない労働環境の実態を把握できるでしょう。

 

5-3.面接で聞いておきたい5つの質問

 

面接での労働条件確認は転職成功の重要な要素です。

 

積極的に質問することで、転職への真剣度と責任感をアピールできます。

また、入社後に「聞いていた条件と違う」というトラブルを避けるためにも、事前の確認は必要不可欠といえるでしょう。

 

転職先の労働環境を正しく判断するために、5つのポイントを具体的に質問しましょう。

 

5-3-1.残業時間の実態について

 

「直近3ヶ月の月平均残業時間と、最も残業が多かった月の具体的な時間数を教えてください」と質問します。

求人票には「月20時間程度」と書かれていても、実際の時間とは乖離している可能性があるため、確認しておきたいポイントです。

 

5-3-2.有給休暇の取得状況について

 

「年次有給休暇の平均取得日数と、取得しやすい時期や申請方法について教えてください」と尋ねてみましょう。

有給休暇の制度があっても、実際に取得できる環境かどうかは別問題です。

 

5-3-3.労働時間管理システムについて

 

「デジタルタコグラフなどの労働時間管理システムは導入されていますか」と確認します。

適切な労働時間管理ができていない会社は、残業代の未払いやサービス残業が横行している可能性が高いです。

 

5-3-4.残業代の計算と支給について

 

「残業代はどのように計算され、いつ支給されるのでしょうか」と詳細を確認します。

基本給に残業代が含まれている「みなし残業制」の場合は、その仕組みも詳しく聞いておきましょう。

 

5-3-5.労働基準監督署の指導履歴について

 

「過去に労働基準監督署から指導を受けたことがありますか」と質問します。

指導歴がある場合は、その内容と改善状況も合わせて確認しておくと安心です。

 

6.まとめ

 

この記事では、ドライバー職への転職戦略について解説しました。

 

2024年4月の法改正により残業時間の上限規制が強化され、職種別では役員運転手が月20〜40時間と最も少なく、トラック運転手は月80時間超と大きな差があります。

戦略的な企業調査と面接での労働条件確認が、転職成功の鍵となります。

 

もちろん、歩合制による収入の変動や勤務シフトの不規則性など、事前に理解し備えるべき点もあります。

この記事の内容を参考に、法的知識と自身の価値観を照らし合わせながら、理想的なドライバー職への転職を実現してください。