ドライバー採用を成功させる7つのポイントとは?定着率を上げる方法も解説
2025年12月18日

2024年4月から、自動車運転者にも時間外労働の上限規制が適用され、ドライバー業界の人材獲得はこれまで以上に難しくなっています。
「求人を出してもドライバーの応募が来ない」「内定を出しても辞退されてしまう」といった悩みを抱えている採用担当者も多いでしょう。
人材を安定的に確保するには、ポイントを押さえた採用戦略が欠かせません。
そこで本記事では、ドライバー採用を成功させるポイントを7つご紹介します。
離職を防ぐ対策についても解説しているので、人手不足の解消を目指す方はぜひ参考にしてください。
目次
1. 2025年のドライバー有効求人倍率は?
厚生労働省のデータによると、2025年10月時点でのドライバー職の有効求人倍率は2.59倍です。
全職種平均は1.18倍のため、ほかの職業と比べても約2.2倍の高水準となっています。
有効求人倍率とは、求職者1人あたりに何件の求人があるかを示す指標です。
1.0を超えると求人数が求職者数を上回る売り手市場となって、人材獲得競争が激しくなります。
2.59倍は求職者1人に対して2.59件の求人がある状態のため、ドライバー職の採用は難度が高い状況といえるでしょう。
2. ドライバーの採用難度が高い理由
ドライバーの採用難度が高い理由は、業界特有の構造的な問題にあります。
採用難度が高くなる原因を理解し、然るべき採用戦略を明確にしていきましょう。
2-1.高齢化による人手不足
ドライバー業界は高齢化が進んでおり、慢性的な人手不足に悩まされています。
厚生労働省の「統計からみるトラック運転者の仕事」によると、貨物運送業の年齢構成は45〜59歳までが46.0%を占める一方、29歳以下の若年層はわずか10.1%です。
今後10~20年で現在の50代ドライバーが引退することを考えると、若手のドライバー不足は深刻な問題となります。
若手の新規参入が増えなければ、人手不足はさらに進み、採用難度も上がり続けるでしょう。
2-2.労働環境の問題
労働環境に対するマイナスイメージも、ドライバー業界の採用難度を高めている理由のひとつです。
主な問題点としては、長時間労働、給与や待遇の低さ、将来のキャリアプランが不透明といった点が挙げられます。
これらの背景から、ドライバー業界は「きつい」「稼げない」「先が見えない」といったネガティブな印象を持たれやすく、敬遠されやすい状況です。
3. ドライバー採用の7つのポイント
難度の高いドライバーの採用には、準備から定着までを見据え、ポイントを押さえた戦略が必要です。
本章で、採用を成功に導くための7つのポイントを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
3-1.採用ターゲットを明確にする
ドライバー採用の第1歩は、誰を採用するかを明確化することです。
ターゲットが曖昧だと、求人の内容や面接の評価基準も定まらず、効率的な採用活動ができません。
ターゲットによって訴求すべきポイントが異なるため、次のような項目をあらかじめ決めておきましょう。
- 経験の有無
- 年齢層(20代・30代・40代など)
- 居住地(通勤可能な範囲)
- 家族構成(独身・既婚・子育て中など)
- 仕事への価値観
例えば、未経験の20代を採用したい場合は「研修制度の充実」や「免許取得支援」などがアピールポイントになります。
一方、経験者の40代を採用したい場合には「給与水準」や「待遇の良さ」を前面に出すとよいでしょう。
ターゲットを明確に定め、採用チーム全体で共有すれば、ミスマッチが減り採用活動が効率化されます。
3-2.給与・待遇の業界水準を把握する
給与と待遇は、応募数を左右する重要な要素です。
当然のことながら、市場相場より低い給与を提示すれば応募は集まらず、相場以上であれば応募が増えます。
採用広告を出す前に、業界の給与水準を把握し、提示する給与が適正か判断しましょう。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、令和6年度のドライバー職種別給与相場は下表のとおりです。
| 職種 | 年間収入額 |
| トラック運転者 | 437万円~492万円 |
| バス運転者 | 461万円 |
| タクシー運転者 | 415万円 |
給与相場は地域によっても異なるため、対象地域ごとに求人サイトで給与水準をリサーチし、他社の条件と比較することが大切です。
業界の水準を把握したうえで、自社の給与や待遇を見直し、他社に見劣りしない条件を提示しましょう。
3-3. 応募が集まる求人原稿の書き方を学ぶ
求人原稿は会社と求職者の最初の接点であり、応募数に大きく影響します。
求人原稿の内容がわかりにくいと、興味を持った求職者も離脱してしまうので、ポイントを押さえて作成しましょう。
応募が集まりやすい求人原稿には、次の3つのポイントがあります。
- 扱う車種や給与、福利厚生などが具体的に書かれている
- 1日の仕事の流れがわかる
- 実際の写真が使われている
求職者が求めている情報を想像し、疑問を持たれないように記載することが重要です。
3-4.既存社員からの紹介を増やす
求人広告からの採用だけでなく、既存社員からの紹介を増やすことも検討しましょう。
既存社員からの紹介、いわゆるリファラル採用は、費用対効果が高い採用手法です。
リファラル採用には、次の3つのメリットがあります。
| メリット | 内容 |
| 採用コストが低い | 広告費が不要で、紹介報酬のみで済む |
| 定着率が高い | 事前に雰囲気や仕事内容を理解しているため、入社後のギャップが少ない |
| ミスマッチが起こりにくい | 社風を知る既存社員が紹介するため、組織に馴染みやすい |
メリットの多いリファラル採用ですが、機能させるには次のような仕組みづくりが必要です。
- 紹介報酬の設定
- 紹介ツールの準備
- 紹介のハードルを下げる工夫
- 成功事例の社内共有
一度仕組みを整えれば、改善こそ必要となりますが、継続的に自社に合った人材の採用が期待できます。
リファラル採用は採用コストを下げられるうえ、定着率も高いので、積極的に活用していきましょう。
3-5.面接で優秀な人材を見極める
採用する人材を見極められなければ、早期退職やトラブルの発生につながり、採用にかけた労力が無駄になってしまいます。
面接では、応募者が理念に合うか、安心して業務を任せられるかを必ず確認しましょう。
具体的には、次のようなポイントを確認することが重要です。
- 必要な資格を持っているか
- コミュニケーションスキルに問題はないか
- 健康面に不安はないか
- 将来の展望やキャリアプランは明確か
- 前職の退職理由は何か
面接前に質問リストを用意し、聞くべきことを整理しておくとよいでしょう。
また、質問するだけでなく、応募者の不安や疑問にしっかり答える姿勢も大切です。
面接の最後に逆質問の時間を設けると、応募者の理解促進にもつながります。
3-6.内定辞退を防ぐ
優れた人材を見つけても、内定辞退されては意味がありません。
自社が採用したい人材は、他社も採用したい人材であることを念頭に置き、先手を打ちましょう。
具体的には、選考スピードを速くする、採用サイトや口コミサイトの情報を整備するなどが必要です。
また、入社前の不安を解消するために既存ドライバーとの交流機会を設ける、家族向けに情報を提供するなども効果的でしょう。
内定辞退を防ぐには、応募者だけではなく関係者も含めて安心してもらうことが重要です。
3-7.採用人材の幅を広げる
ポイントを押さえた採用戦略を実施しても、求職者が思ったように集まらない場合は、採用人材の幅を広げることも選択肢のひとつです。
設定したターゲットを見直し、これまでターゲット外としていた人材にも目を向けてみましょう。
具体的には、未経験者や女性ドライバーの採用、シニア人材の活用などが選択肢となります。
受け入れ事業者側に条件はありますが、外国人ドライバーの雇用も考えられるでしょう。
さまざまな可能性を模索しながら、自社に合った方法を選ぶことが重要です。
どうしてもドライバーを確保できない場合は、アウトソーシングも視野に入れることをおすすめします。
4. ドライバーが辞めてしまう理由5選
人手不足を解消するには、採用だけではなく、離職率を下げることが重要です。
採用した人が辞めてしまわないように、離職の主な理由を知り、対策を立てましょう。
4-1.給与・待遇への不満
ドライバーが辞める理由の1つ目は、給与や待遇面への不満です。
給与の不透明さや昇給の少なさが主な要因として挙げられます。
ドライバーの給与は全産業平均と比べても低い傾向にあり、他業種への転職が視野に入りやすい状況です。
対策としては、市場相場に合わせた給与設定、手当の明確化、昇給基準の透明化などが必要となります。
給与だけでなく、福利厚生を充実させることも離職防止に効果的でしょう。
4-2.労働時間・休日の問題
2つ目の理由は、労働時間の長さや休日出勤などの問題です。
2024年4月に時間外労働の上限規制が施行されたものの、他業種と比べると依然として拘束時間が長くなっています。
労働時間の見える化や、荷待ち時間の削減、DXによる業務効率化などの対策が必要でしょう。
面接時に休日の取得実績を明示すると、ミスマッチが減る可能性があるので、ぜひ検討してみてください。
4-3.人間関係のトラブル
3つ目の理由は、人間関係のトラブルです。
ドライバーの場合、配車担当者や同僚ドライバー、顧客など、さまざまな相手と関わる機会があります。
多くの人と接する分、トラブルに巻き込まれやすい点が課題です。
また、1人で業務する時間も長いことから、社内でのコミュニケーション機会が限られ、孤立しやすいという問題もあります。
そのため、定期的な1on1ミーティングや相談しやすい雰囲気づくりを行い、交流機会を増やすことが重要です。
メンター制度も新入社員の孤立防止に効果的です。
人間関係の良さは仕事選びでも重要視されるため、対策をしっかりと行いつつ、良好な職場環境であることを積極的にアピールしていきましょう。
4-4.キャリアプランが見通せない
4つ目の理由は、キャリアプランが見通せないことです。
昇給や昇格の基準が不明確だと、働き続けることに不安を感じ、将来が見通せず離職してしまいます。
長く安定的に働いてもらうためにも、次のような対策が必要です。
- 明確な評価制度の導入
- 昇給基準の透明化
- キャリアパスの提示
- キャリア面談の実施
- 資格取得支援制度の導入
入社時だけではなく、定期的に面談を行い、不安を持たせないようにしましょう。
キャリアの希望があった場合は、可能なかぎり実現に向けてサポートすることが重要です。
4-5.会社の将来性への不安
5つ目の理由は、会社の将来性に対する不安です。
経営面への懸念や、業界全体の先行きが暗く見える状況は、離職につながりやすい要因となります。
2024年問題や燃料費の高騰、人手不足などドライバー業界を取り巻く環境は厳しく、将来への不安を抱きやすいのが現状です。
厳しい状況だからこそ、従業員一人ひとりと向き合い、不安を軽減する取り組みが求められます。
具体的には、経営状況の見える化やDXの推進によって会社の成長性を示すとともに、個人の市場価値を高められる機会を提供しましょう。
資格取得支援やスキルアップのためのセミナー開催も効果的です。
「この会社で身につけたスキルはほかでも通用する」と従業員が感じられれば、不安は大きく和らぎます。
会社の将来性と、従業員のキャリアの安定性の両方を確保することが重要です。
5. ドライバー業界で定着率を上げる方法とは?
ドライバー業界で人が定着する職場には、いくつかの共通した特徴があります。
特徴を把握し、取り入れられる部分から改善していくことで、徐々に定着しやすい職場へと近づいていくでしょう。
定着率の高い職場の主な特徴は、次の5つです。
- 定期的に給与や待遇を見直している
- 労働時間や休日が適正化されている
- キャリアパスが明確に示されている
- 個別面談を実施している
- 従業員のニーズを満たす職場環境になっている
定着率の向上には、従業員だけではなく、経営者層や管理者層の努力が欠かせません。
マネジメントスキルやリーダーシップについて継続的に学び、ドライバーが長く働き続けたいと思える職場づくりを進めていきましょう。
6. ドライバー採用についてよくある質問
ドライバーを採用するうえで、多くの企業が共通した疑問や悩みを抱えています。
続いては、ドライバー採用について特に多く寄せられる質問を3つご紹介します。
6-1.採用単価の相場は?
採用媒体によって異なるため一概にはいえませんが、おおよそ30万円以上が相場です。
主な内訳は、求人掲載費や人材紹介手数料、広告費用などが挙げられます。
採用単価を下げたい場合は、リファラル採用の活用や、自社にあった採用媒体の選定が重要です。
また、ドライバー業務自体をアウトソーシングするという選択肢もあります。
コストを比較し、最適な方法を検討しましょう。
6-2.未経験者と経験者どちらを採用すべき?
育成コストや即戦力性を考えると、どちらかといえば経験者を採用する方がよいでしょう。
ただし、個人差があるうえ、会社の状況によっても求める人材は異なります。
例えば、将来性を重視したいから未経験者や、業務に必要な資格を持っているから経験者など、目的に応じて使い分けることが重要です。
社内の育成制度は整っているか、経験者に求めるレベルはどの程度なのかなどを明確にし、自社に必要な人材を採用しましょう。
6-3.2024年問題で採用はさらに難しくなる?
2024年問題について何の対策も講じなければ、採用環境はさらに厳しくなると考えられます。
2024年4月から時間外労働の上限規制が施行され、1人のドライバーが運べる荷物量が減少しました。
その結果、業界全体でより多くのドライバーが必要となり、採用競争は一段と激化しています。
有効求人倍率も上昇しているため、ドライバーから選ばれる会社になることが重要です。
採用の条件を見直しに加え、未経験者や女性ドライバー、シニア人材の採用も検討するとよいでしょう。
7. まとめ
ドライバー業界は深刻な人手不足に加え、2024年問題による時間外労働の上限規制で、これまで以上に売り手市場となっています。
このような状況で人材を確保するには、採用だけではなく定着までを見据えた取り組みが不可欠です。
採用のポイントを押さえたうえで、紹介制度の活用や、内定辞退を防ぐための仕組みづくりを行いましょう。
また、離職理由を理解し、待遇・労働時間・人間関係・キャリアの不安といった課題を改善して、長く働ける職場づくりを目指すことも重要です。
求職者が集まらない場合は、未経験者・女性・シニア層へのアプローチや、ドライバー派遣といったアウトソーシングも有効な選択肢となります。
採用と職場環境の両面を整えることこそ、人手不足を抜け出すための近道です。
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